ノベルティ・販促・広告・宣伝に利用されるクリップの歴史


 日本で最も詳しい「ペーパークリップとノベルティ販促宣伝広告の歴史」を目標に、特許などを調べて時間軸で整理しています。宣伝媒体としてのクリップの発展も「オリジナル1番」が調査し公開しています。クリップがいつごろからノベルティ宣伝広告販売促品として利用されてきたのか。

 クリップで挟まれた資料は回覧や配布されるので、クリップは広く拡散します。そのために多くの人の目にクリップは留まることになります。更にクリップの使われる量も膨大です。これらが理由で、ペーパークリップは宣伝媒体として大変魅力的なものなのではないでしょうか。ペーパークリップを宣伝に利用しようとする動きは世界の特許からも見て取れます。クリップの歴史と宣伝用クリップについて調査し、時系列に追加しています。

 著作権の問題がありますので、読者に理解いただける範囲で「オリジナル1番」が図面を描いています。

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 このページを参考にされた方は、よろしければ参考資料の一つとしてご紹介いただければ、大変にありがたいとおもいます。リンクを張っていただいても結構です。

 続けて、情報を追加していきますので、ときどき見に来てください。


ゼムクリップとは

 ゼムクリップ(Gem Clip)は、イギリスのゼムマニュファクチャリング社により開発されたクリップだという情報がありますが、イギリスのGEM manufacturing 社の商標でなく、アメリカのCushman & Denison Mfg.  Co. 社の商標であると最近では言われています。ゼムクリップは現在でも最も多く利用されているペーパークリップで、英語ではGem Clip と記述され、ジェム(dʒém) クリップと発音されます。これがゼムクリップと日本では呼ばれるようになったと解釈されます。辞書によりますとgemの意味には宝石・貴重な物などの意味があます。このクリップはなんとなく綺麗でしかも貴重なものであったのではないでしょうか。

 

 更な詳しくは、ペーパークリップについて最も詳しく紹介しているEarly Office Museum を見てください。リンク許可はホームだけになりますので、以下のようにpaper clipsにたどり着いてください。

 [ Exhibits ] 

 [ Staplers, Paper Fasteners, Paper Clips ]

 [ Paper Clips ]

 

ゼムクリップ開発と鋼製線材開発との関係

電線の開発によりますと、ベッセマー(Henry Bessemer)によりベッセマー法が1855年に開発され、それ以降に安価でかつ優れた性能の鋼が量産できるようになリます。ベッセマー法が開発される以前は鋼製線材は高価なものであったわけです。それ以降に鋼製線材を利用した製品が普及するということは十分に考えられます。チケットファスナーが1867年。ゼムクリップの販売が1892年。ペーパークリップ製造機の特許が1899年ですから、ゼムクリップの量産(価格低下)が可能になったのが1899年以降だと考えられます。


世界初のクリップ(Fayクリップ)

1867/04/23 アメリカ特許 US64088 チケットファスナー

  紙に穴を開けずに紙を束ねられるようにしたクリップとしては針金を曲げた最初の特許になるようです。この特許のタイトルは、「チケットファスナー」で「ペーパークリップ」ではありませんが、紙なども束ねることが可能であると述べられています。Samuel B. Fayにより発明されました。「ピンを刺した時には傷が残るが、このチケットファスナーでは傷がつかない」とその効果が記述されています。この時代には、紙を束ねるのに一般的にピンで刺していたことがうかがえます。


ゼムクリップ

1892/03/01 ゼムクリップの販売開始????

The early Office Musuem によりますと、1894/08と記述されたゼムクリップのパッケージが現存しており、そこにゼムクリップの絵も書かれているという。その推測から販売の開始は1892/03/01ということのようです。


1899/11/07 アメリカ特許 US636272  ワイヤペーパークリップ製造機

よく知られたゼムクリップの図が描かれていて、ゼムクリップの絵が描かれた最も古い特許文献だと言われています。ゼムクリップを製造する機械の特許であって、ゼムクリップの特許文献ではありません。ゼムクリップについての特許文献は記録がなく、特許になっていなかったというのが現在の結論のようです。


1905 フクロウクリップ

 針金タイプのクリップは、コンピュータ制御の発達により、様々な形状に簡単に現在では製造できるようになりました。会社のロゴ形状などに加工して販促品として宣伝にも利用していく傾向が現在見られます。

 ゼムクリップの出現以来、多くの発明家は針金タイプのクリップとしての性能を改良してきました。そんな中で、針金クリップの形状デザインに目を付けたクリップの走りが、フクロウクリップではないでしょうか。フクロウ形状のクリップは特許や意匠に登録されていないようです。このフクロウクリップは現在でも販売されていて人気のクリップの一つになっているようです。

 このクリップによく似たものがアメリカ特許意匠D53554で1919/7/15(図に表示)に登録されています。この登録されているクリップをダリクリップと私は勝手に付けました。画家のダリに似ていませんか。


ダブルクリップの特許(1910年代)

1912/02/24 日本特許 JP21702 書類挟

 このクリップは、ダブルクリップと呼ばれて現在でも販売されています。クリップの持ち手を折りたたんで横から見るとW形です。このW(ダブリュ)がダブルと変化したようです。これはアメリカ人による発明になります。このクリップには、表題札・インデックスとして利用するために文字の記入ができるようにこのとき既に考えられています。現在販売されているダブルクリップと機構がほとんど変わっていないのもすごいことですね。参考:アメリカ特許出願日1910/06/02、特許番号US1139627、登録日1915/05/18

 


ノベルティクリップとして現在も利用されているクリップ

1913/08/19 アメリカ特許 US1070683 ペーパークリップ

 針金でなく金属シートで作る構造のクリップです。現在でも沢山販売されているダブルクリップとほぼ同じ時期に開発されているんですね。この後に、スプリング機能となっている肩の部分の形状がいろいろ変化されていきます。シート状の面積を生かして色々な印刷が施され、現在でもオリジナルのノベルティなど販促用クリップとして使用されています。


1923/11/04 アメリカ特許 US1476420 紙挟持具

 ゼムクリップの外側にカバーをつけて、そのカバーに記述するようにしたもので、お札をセットで留めるために考えられたようです。 


1930/04/15 日本実用新案出願公告 4678 「カード」又は帳簿等の見出標

 この時にすでに日本人はクリップをインデックに利用することを考えていたんですね。ゼムクリップだけでなく、形状の違うものも利用できるとしてサンプルが記述されています。


 


1934/10/16 日本 実用新案出願公告13863 ペーパー、クリップ

ゼムクリップの小さな部分をカバーする方法と大きな部分をカバーする二つのアイデアが記述れされています。大きな部分をカバーするアイデアは既に1923年のアメリカ特許US1476420 紙挟持具に公開させれていますが、小さな部分をカバーするアイデアは、こちらが先かもしれません。日本人も、早くから宣伝に利用できると考えていたんですね。


1935/09/22  アメリカ US 2055152  タブクリップ

ゼムクリップの両外端にカバーを付けてタブとして利用するように改良したもの。

 



1959/10/19 イギリス特許 GB930491 インデックス用表示具の改良

 ゼムクリップの差し込み部でない側をカバーして、文字が書けるようにしてインデックスとして利用する。


1961/11/30公開 スイス特許 CH357374

機能面だけを追いかけてきたクリップの横幅を広げたり、中心部を広げて、文字が入れられるように色々なデザインが提案されています。

 


1967/07/28 フランス特許 FR1489764  宣伝用のクリップ

  ここに示した以外にもたくさんのクリップが記述されていてクリップを積極的に宣伝に利用していこうという考えが強くあるように感じます。ここに示したゼムクリップの変形であるワイヤタイプの小さな部分をカバーして宣伝用に利用していく構造が既に記述されています。現在でも、オリジナルノベルティクリップとして作成されていますね。 


1981/09/01 アメリカ特許 US4286358

ゼムクリップの小さな差込口部分にカバーをかけて、その部分に会社のロゴや文字を入れるアイデアです。その他いくつかサンプルが掲載されています。ここでは代表的なものを一つ載せました。クリップの一部分にカバーをかけるアイデアになります。

このアイデアは、1934/10/16 日本 実用新案出願公告13863 ペーパー、クリップにすでに考案されています。